銀行振込の領収書:出すべきか、印紙は貼るか
最終確認日 2026年10月23日
銀行振込では振込の控えや通帳が支払いを示すため、一般的には領収書を省く取引も多くあります。それでも紙の領収書を渡すと金銭の受取書となり、売上代金なら5万円以上で収入印紙が要りますが、PDFやメールで送れば印紙は不要です。
振込で払った人も領収書を求められる
民法486条1項は、弁済をする者が、弁済と引換えに受取証書の交付を請求できると定めています。支払方法が振込でも、この請求権そのものは変わりません。
同条2項では、紙の代わりに、受取証書の内容を記録した電磁的記録を求めることもできます。ただし、受け取る側に不相当な負担を課す場合は除かれます。
振込は口座への入金で完了するので、払う人と受け取る人が顔を合わせません。一般的には、求めがあったときだけ領収書を郵送かメールで送る、という運用がよく見られます。
振込の控えと通帳は支払いの記録になる
国税庁の記帳・帳簿等保存制度のパンフレットは、青色申告で残す書類を区分して示しています。そのうち「現金預金取引等関係書類」には、領収書、小切手控、預金通帳、借用証などが並びます。
インボイス制度のQ&A(問95)は、口座振込で家賃を払う例を取り上げています。記載事項の一部を書いた契約書と、銀行が発行した振込金受取書を一緒に残す形です。これで請求書等の保存があるものとされ、仕入税額控除の要件を満たすとしています。
口座振替なら、契約書と通帳の記録の組み合わせでもよいとされます。ただし、取引の途中で相手が登録をやめても、知らせがなければ気付きにくい点に注意が必要です。
振込の後に渡す領収書も印紙税の対象
国税庁の質疑応答では、金銭の受取書を「受領事実を証明するために作成し、引渡者に交付する単なる証拠証書」と説明しています。お金を受け取った方法は、この定義に入っていません。
そのため、振込で入金された代金について紙の領収書を作って渡せば、第17号文書に当たります。商品やサービスの代金で5万円以上なら、受取金額に応じた印紙を貼ります。
印紙税法基本通達は、「振込済みのお知らせ」なども第17号文書になるとしています。口座振込などで入金を受けた債権者が、入金を相手に知らせる文書のことです。表題を変えても課税は避けられません。
一方、銀行が受取人(被振込人)に渡す入金通知書や当座振込通知書は、課税文書に当たらないとされています。
PDFやメールで送るなら印紙は要らない
国税庁は、印紙税がかかるのは課税物件表に掲げる文書であり、電磁的記録は文書に含まれないと回答しています。振込を受けた後に領収書をPDFにしてメールで送れば、金額にかかわらず印紙税はかかりません。
振込で受け取る取引は、もともと対面のやり取りがありません。領収書もデータで送ると、郵送の手間と印紙代の両方を省けます。一般的には、この組み合わせを選ぶ事業者が増えています。
受け取った側は、届いたPDFをデータのまま保存します。保存のしかたは電子帳簿保存法の要件に沿います。
振込手数料を差し引かれて入金されたとき
買い手が振込手数料分を請求額から引いて払うことがあります。国税庁Q&A(問29)では、売り手はこの額を売上値引きとして扱うか、買い手から受けたサービスの対価として扱うかを選ぶと説明しています。
売上値引きとする場合、原則は返還インボイスの交付が必要です。ただし1万円未満なら交付義務は免除され、例の440円も不要とされています。
領収書に書く金額や但し書きについて、国税庁の資料に決まった形は示されていません。一般的には、実際に入金された額を書き、差し引かれた手数料はその内訳として添えると、帳簿と突き合わせやすくなります。
振込の領収書の宛名と日付
宛名や但し書きについて、振込の場合だけの決まりはありません。一般的には、請求書の宛先と同じ名前を宛名にし、但し書きに「〇月分請求書のお支払い(お振込み)」のように取引の中身を書きます。
日付は、一般的には口座への入金を確かめた日を受領日として書きます。振込名義が個人名で、宛名を会社名にしてほしいと頼まれたときは、誰の支払いかを確かめてから応じると後で混乱しません。
よくある質問
振込で払った代金の領収書を頼んだら断られました。
民法上は受取証書を請求できます。ただ、経費の証拠としては振込の控えや通帳の記録に請求書を添える方法もあるので、どちらで対応するか相手と話し合ってください。
振込の領収書を郵送したら、印紙はいつの時点で必要ですか。
国税庁の質疑応答では、郵送で渡す受取書は、相手に届いた時ではなく発信した時が作成の時とされています。送る前に印紙を貼って消印をしておきます。
ATMの利用明細票だけでインボイスの要件を満たせますか。
明細票だけでは、登録番号や取引の内容がそろいません。国税庁Q&Aの家賃の例のように、記載事項を補う契約書や請求書と組み合わせて保存します。
出典(確認日)
- e-Gov法令検索 民法 第486条(2026-10-23)
- 国税庁 記帳・帳簿等保存制度(個人で事業を行う方)パンフレット(2026-10-23)
- 国税庁 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(令和8年5月改訂)(2026-10-23)
- 国税庁 質疑応答事例 金銭又は有価証券の受取書とは(2026-10-23)
- 国税庁 質疑応答事例 受取書の作成の時(2026-10-23)
- 国税庁 印紙税法基本通達 別表第一 第16号文書から第17号文書まで(2026-10-23)
- 国税庁 質疑応答事例 取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い(2026-10-23)
- 国税庁 No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書(2026-10-23)