領収書の宛名「上様」は使えるか
最終確認日 2026年10月15日
「上様」は、相手の名前の代わりに書く慣用的な宛名です。一般的には、簡易インボイスを交付できる業種の領収書なら「上様」でかまいませんが、それ以外の取引でインボイスとして渡すなら相手の名称が必要です。
「上様」の意味
「上様」は「うえさま」または「じょうさま」と読み、宛名を特定しないで済ませるときに使われてきた呼び方です。相手が名乗らなかったときや、レジが混んでいるときに、お店がよく使います。
誰が支払ったのかを示さないので、名前の入った領収書より証拠としての力は弱いと受け止められがちです。
経費精算で嫌がられる理由
会社の経費精算では、宛名を見て「会社のための支払いか」を確かめます。「上様」だと、家族の買い物の領収書を回してもらった場合と見分けがつきません。
そのため、「上様」の領収書を受け付けない、または支払いの目的を書いた理由書を求める社内規程を置く会社もあります。
受け取る側が名刺を出すか会社名を伝えておけば、あとで事情を説明する手間がかかりません。
インボイス制度での宛名の扱い
国税庁の資料では、適格請求書(インボイス)の記載事項の6番目に「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」が挙がっています。一般の事業者間の取引でインボイスとして渡すなら、相手の名称を書きます。
これに対し、小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業、駐車場業など、不特定かつ多数の人に販売する事業は、簡易インボイス(適格簡易請求書)を交付できます。簡易インボイスには、相手の名称を書く欄がそもそも求められていません。
国税庁Q&A(問58-2)の手書き領収証の記載例では、宛名欄に「宛名は省略可能」「『上様』の表記も可能」と注記されています。ホテルや旅館の宿泊も、簡易インボイスを交付できる事業に含まれると説明されています。
| 書類の区分 | 宛名の扱い |
|---|---|
| 適格請求書(一般の事業者間取引) | 相手の氏名又は名称が必要 |
| 適格簡易請求書(小売・飲食・タクシーなど) | 省略できる。「上様」も可 |
| インボイスとして渡さない領収書 | 相手先の社内ルールで判断されることが多い |
「上様」と書かれた領収書を受け取ったら
受け取った人が、あとから自分で会社名を書き入れるのは避けます。国税庁は、受け取ったインボイスの記載事項を買手が自ら修正することは原則として認められないと説明しています。
宛名を入れ直してほしいときは、発行したお店に事情を話し、元の領収書と引き換えに新しいものを出してもらえるか相談するのが確実です。
発行する側は、相手が会社の経費にするつもりなら宛名を確認してから書くと親切です。相手から「上様で」と言われたら、その希望に従ってかまいません。
宛名を書くときの基本
宛名は、株式会社や合同会社といった部分も省かず、登記どおりの名称で書くと相手の確認がスムーズです。「(株)」のような略記を嫌う経理部門もあります。
個人あてなら氏名に「様」を付けます。会社あての領収書でも、「御中」ではなく「様」と書く例がよく見られます。
よくある質問
「上様」の領収書は経費にできませんか。
宛名だけで経費になるかどうかが決まるわけではありません。一般的には、支払いの内容と事業との関係を説明できるかが大切です。勤務先の規程での扱いも確かめてください。
飲食店でもらった「上様」の領収書で仕入税額控除はできますか。
飲食店業は簡易インボイスを交付できる業種です。登録番号や税率ごとの金額などがそろっていれば、一般的には宛名が「上様」でも保存書類として使えます。
従業員の名前が宛名の領収書は会社で使えますか。
国税庁Q&A(問94-2)では、従業員名の簡易インボイスでも、従業員名簿などで所属が分かれば会社の仕入税額控除に使えるとしています。名簿がないときは立替金精算書の保存が必要です。
出典(確認日)
- 国税庁 適格請求書等保存方式に関するQ&A(令和8年5月改訂)(2026-10-15)
- 国税庁 Q&A 問92 交付を受けた適格請求書に誤りがあった場合の対応(2026-10-15)
- 国税庁 インボイス制度の理解のために(令和8年4月)(2026-10-15)