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領収書の印鑑:押さないと無効になるのか

最終確認日 2026年10月23日

まず、よくある答え

民法の受取証書の規定にも、インボイスの記載事項にも、押印は含まれていません。印鑑がない領収書もそれだけで効力を失うわけではなく、押す位置や印の種類は一般的には慣行で決まります。

法律は押印を求めているか

民法第486条は、お金を払う人が、支払いと引き換えに受取証書を求められると定めています。条文が求めているのは書面を渡すことで、印を押すことには触れていません。

同じ条の第2項では、紙の代わりに内容を記録した電磁的記録の提供を求めることもできます。受け取る側に不相当な負担を課す場合は、この限りでないとされています。

内閣府・法務省・経済産業省は「押印についてのQ&A」を公表しています。そこでは契約について、書面への押印は特段の定めがある場合を除き必要な要件ではないとしています。押印しなくても契約の効力に影響は生じない、とも書かれています。

出典:e-Gov 法令検索 民法 第486条(受取証書の交付請求等)

インボイスの記載事項に押印はない

国税庁のQ&A(問25)は、適格請求書の様式は法令等で定められていないとしています。挙げられている記載事項は、発行者の名称と登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとの金額と税率、消費税額等、受け取る事業者の名称の6つです。

この中に、印鑑や署名の欄はありません。手書きの領収書についても、問26は必要な事項が書かれていれば適格請求書に当たるとしており、押印を条件にしていません。

簡易インボイスは、このうち受け取る事業者の名称を省いた形です。印鑑を押していないことを理由に、インボイスとして扱われなくなるという説明は国税庁の資料に見当たりません。

インボイス対応の領収書の書き方登録番号を確認する

出典:国税庁 適格請求書等保存方式に関するQ&A 問25・問26(令和8年5月改訂)

印鑑を押すと何が変わるか

民事訴訟法第228条第4項は、本人またはその代理人の署名か押印がある私文書は、真正に成立したものと推定すると定めています。押印には、裁判で「本人が作った書類」と示しやすくする働きがあります。

ただし前述のQ&Aは、この推定は反証で崩れることがあり、効果は限定的だと述べています。認印の場合は、印影と本人の印章が一致することの証明に事実上困難が生じ得るとも指摘しています。

あわせてQ&Aは、継続取引ではメールの送受信記録の保存も、領収書などの成立を裏付ける重要な事情になり得るとしています。印鑑の有無よりも、やり取りの記録を残すほうが役立つ場面もあります。

出典:内閣府・法務省・経済産業省 押印についてのQ&A(令和2年6月19日)

押す位置と印の種類

位置を定めた決まりはありません。一般的には、発行者の会社名や氏名の右端に、文字へ少し重ねて押す形がよく見られます。

会社の領収書では、一般的には社名を彫った四角い角印が使われます。個人事業者は、屋号や氏名のゴム印に認印を添える例が多く、実印まで使うことはあまりありません。

押すかどうかを社内規程で決めている会社もあります。受け取る相手から押印を頼まれたときは、規程に沿って対応すれば足ります。

シャチハタ(浸透印)は使えるか

インク内蔵の浸透印を禁じる法令の規定も、確認した資料にはありません。一般的には、日常の領収書なら浸透印でも受け取られることが多いものの、朱肉を使う印を求める会社もあります。

収入印紙の消印は別の話です。印紙税法施行令第5条は、作成者や代理人、従業者の印章か署名で消すと定めています。

国税庁の質疑応答では、消印は文書に押した印と同じものでなくてよいとされています。領収書に押した角印と、印紙を消す印が違っていてもかまいません。

収入印紙の金額と消印のしかた

出典:国税庁 質疑応答事例 印紙の消印の方法

よくある質問

印鑑のない領収書をもらいました。経費にできますか。

押印がないことだけで経費にできなくなる、という規定は見当たりません。日付、金額、支払先、内容がそろっているかを確かめ、勤務先の精算ルールも確認してください。

PDFの領収書に印影の画像は要りますか。

法令上の決まりはありません。一般的には、紙の領収書に合わせて角印の画像を入れる会社もあれば、入れない会社もあります。

押し忘れた領収書を、取引先から送り返されました。

求められた場合は、一般的には押印して返送します。押印がないこと自体で領収書の効力が変わるわけではない点は、相手に伝えてもかまいません。

印紙の消印も、シャチハタで押してかまいませんか。

国税庁は、誰が消したか一見して分かり、通常の方法では消し去れないことを求めています。氏名などが判読できる印章であれば、この条件に照らして判断します。

出典(確認日)

一般的な情報です。個別の判断は税理士・社労士などにご相談ください。