個人事業主に報酬を払うときの源泉徴収
最終確認日 2026年10月15日
対象は所得税法204条1項に並ぶ報酬で、原稿料、デザイン料、講演料、弁護士や税理士などの報酬が代表例です。
税額は100万円以下なら10.21%、超える部分は20.42%で、1円未満は切り捨てます。
給与を払っていない個人が支払う場合は、一般的には源泉徴収をしなくてかまいません。
源泉徴収の対象になる主な報酬
居住者である個人に払う報酬のうち、源泉徴収が必要なものは所得税法204条1項に列挙されています。フリーランスとの取引で出てきやすいのは次のようなものです。
- 原稿、さし絵、作曲、デザインの報酬、講演料、放送謝金、著作権の使用料など(1号)
- 弁護士、司法書士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、建築士、不動産鑑定士、技術士などの業務に関する報酬(2号)
- モデルや外交員、プロスポーツ選手に払う報酬
- 映画・演劇・音楽などの出演料、芸能プロダクションを営む個人への報酬
- 役務の提供を約束して一度に払う契約金、広告宣伝のための賞金
名目ではなく中身で判断する
謝礼、取材費、調査費、車代といった名目で払っても、実態が原稿料や講演料と同じなら源泉徴収の対象です。お金ではなく物で渡す場合も、報酬に含まれます。
講師の交通費や宿泊費は原則として報酬に含めますが、支払う側がホテルや交通機関に直接払った通常必要な範囲の金額は、含めなくてよいとされています。
懸賞の入選者に払う賞金や投稿欄の謝金は、一人に1回5万円以下なら源泉徴収しなくてかまいません。ただし試験問題の出題料や答案の採点料は、原稿料には含まれません。
税額の計算:10.21%と20.42%
原稿料や講演料、弁護士・税理士の報酬などは、支払金額が100万円以下なら10.21%、100万円を超えるときは超えた部分に20.42%をかけ、102,100円を足します。求めた税額の1円未満は切り捨てます。
たとえば150万円の原稿料なら、50万円×20.42%+102,100円で204,200円です。8万8,888円の報酬なら10.21%で9,075.4648円となり、切り捨てて9,075円です。
令和9年分以後は防衛特別所得税が加わりますが、復興特別所得税が2.1%から1.1%に下がるため、合計の10.21%は変わりません。計算のしかたも同じです。
司法書士、土地家屋調査士、海事代理士への報酬は計算が違い、同じ人に1回に払う金額から1万円を引いた残りに10.21%をかけます。
| 支払金額(A) | 源泉徴収税額 |
|---|---|
| 100万円以下 | A×10.21% |
| 100万円超 | (A−100万円)×20.42%+102,100円 |
消費税を分けて書けば、税抜の額で計算できる
報酬に消費税等が含まれているときは、原則として税込みの金額に税率をかけます。請求書で報酬と消費税等がはっきり分かれていれば、報酬の部分だけを対象にしてかまいません。
国税庁の例では、請求書に報酬110,000円とだけ書かれていれば源泉徴収税額は11,231円です。報酬100,000円と消費税等10,000円を分けて書いてあれば10,210円になります。
インボイス制度が始まったあとも、この取扱いは変わっていません。請求書に税抜の報酬額と消費税額を並べて書いておくと、双方の計算がそろいます。
源泉徴収をしなくてよい支払者
法人が報酬を払う場合は、原則として源泉徴収が必要です。一方、個人が払う場合は、給与の支払をしているかどうかで変わります。
一般的には、従業員に給与を払っていない個人や、常時2人以下のお手伝いさんなど家事使用人だけに給与を払っている個人は、報酬の源泉徴収をしなくてかまいません。ただしホステス等への報酬は例外です。
青色事業専従者に給与を払っている個人事業者は、その給与に税額がなくても給与の支払者に当たるため、報酬の源泉徴収が必要になります。会社員が自分の確定申告のために税理士へ払う報酬は、源泉徴収の対象外です。
差し引いた税金の納め方
原稿料や講演料などから差し引いた税額は、支払った月の翌月10日までに納めます。e-Taxで所得税徴収高計算書のデータを送ってキャッシュレスで納付するか、納付書を付けて金融機関や税務署の窓口で納めます。
原稿料や講演料の源泉徴収税額は、納期の特例の対象になりません。支払が少ない月でも、翌月10日が期限です。
受け取る個人事業主から見た源泉徴収
源泉徴収の対象になる仕事では、入金額は報酬から源泉徴収税額を引いた金額になります。請求書には、報酬、消費税、源泉徴収税額、差引の請求額を分けて書くと、相手が入金額を確かめやすくなります。
たとえば税抜の報酬10万円なら、消費税1万円を足して源泉徴収税額10,210円を引き、振り込まれるのは99,790円です。
差し引かれた税金は、確定申告で精算します。申告書第一表の源泉徴収税額の欄に1年分の合計を書き、第二表の「所得の内訳」欄に支払者ごとの内訳を書きます。計算した所得税より源泉徴収税額が多ければ、差額が還付されます。
支払調書は、支払った側が税務署に出す書類で、受け取る側に渡す義務はありません。届かなくても申告できるよう、入金の記録や請求書の控えから源泉徴収税額を集計しておきましょう。
よくある質問
法人成りした取引先に払う報酬も源泉徴収しますか。
内国法人への支払で源泉徴収が必要なのは、馬主である法人への競馬の賞金などに限られます。一般的には、法人へのデザイン料などは源泉徴収しませんが、提出範囲に当たれば支払調書は出します。
個人事業主どうしの取引でも源泉徴収は必要ですか。
支払う側が給与を払っているかで決まります。一人で事業をしていて給与の支払がなければ、一般的には源泉徴収はいりません。
請求書に源泉徴収税額が書かれていませんでした。
源泉徴収の義務は支払う側にあります。一般的には、請求書に記載がなくても支払う側が計算して差し引き、相手に入金額を伝えます。
1万円の原稿料でも源泉徴収しますか。
一般的には差し引きます。1万円なら10.21%で1,021円です。1回5万円以下なら源泉徴収しなくてよいとされているのは、懸賞の入選賞金や投稿の謝金です。
出典(確認日)
- e-Gov法令検索 所得税法(第204条)(2026-10-15)
- 国税庁 No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは(2026-10-15)
- 国税庁 No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき(2026-10-15)
- 国税庁 No.2798 弁護士や税理士等に支払う報酬・料金(2026-10-15)
- 国税庁 No.2801 司法書士等に支払う報酬・料金(2026-10-15)
- 国税庁 No.6929 消費税等と源泉所得税および復興特別所得税(2026-10-15)
- 国税庁 No.2793 報酬・料金等の源泉徴収義務者(2026-10-15)
- 国税庁 No.2502 源泉徴収義務者とは(2026-10-15)
- 国税庁 防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし(令和9年1月以後)(2026-10-15)
- 国税庁 令和7年分 確定申告の手引き(PDF)(2026-10-15)
- 国税庁 No.2030 還付申告(2026-10-15)