振込手数料はどちらが負担する?請求書への書き方と差し引かれたときの処理
最終確認日 2026年10月15日
民法485条は、弁済の費用は別段の意思表示がなければ債務者が負担すると定めています。そのため一般的には、代金を支払う側が振込手数料を負担します。
民法の原則は支払う側の負担
代金を振り込むためにかかる費用は、民法でいう弁済の費用に当たると考えられています。民法485条は、別段の意思表示がないときは、この費用を債務者、つまり支払う側の負担としています。
ただし、これは当事者が何も決めていない場合の扱いです。契約で「振込手数料は受け取る側の負担」と合意していれば、一般的にはその合意が優先されます。
なお、受け取る側が住所の移転などで費用を増やした場合、その増えた分は受け取る側が負担するとも定められています。
請求書に添える文例
負担について念を押したいときは、振込先の近くに一文を添えます。次のような書き方がよく使われます。
- お振込手数料は貴社にてご負担くださいますようお願いいたします。
- 恐れ入りますが、振込手数料はお客様のご負担でお願いいたします。
- 上記金額を、振込手数料を差し引かずにお振り込みください。
請求書の一文だけでは足りないことも
請求書は取引が終わった後に届く書類なので、そこに書いた一文は相手へのお願いにとどまります。相手の支払規程で手数料を差し引く運用になっていると、請求書の記載だけでは変わらないことがあります。
負担のルールは、見積書や契約書、発注書の段階で明記し、合意しておくのが確実です。継続取引なら、最初の取引で一度確認しておけば、その後の行き違いが減ります。
手数料を差し引いて入金されたときの処理
たとえば110,000円の請求に対し、手数料相当額440円を引いた109,560円が振り込まれたとします。国税庁のQ&Aでは、この440円の扱い方として次の3つが示されています。
売上値引きとして処理する場合は、対価の返還等に当たります。返還インボイスの交付が原則ですが、税込1万円未満なので交付義務はありません。元の取引が軽減税率の対象なら、値引きにも8%を使います。
支払手数料として処理し、仕入税額控除を受ける場合は、相手からの適格請求書か、相手の確認を受けた仕入明細書などが必要です。
経理上は支払手数料の科目のまま、消費税では対価の返還等として扱うこともできます。その場合は、通常の支払手数料と区別できるよう、帳簿に別のコードを設けるなどの工夫が求められます。
| 処理の考え方 | 消費税での扱い | 必要な書類 |
|---|---|---|
| 売上値引き | 売上げに係る対価の返還等 | 返還インボイス(1万円未満なら交付不要) |
| 支払手数料(相手からの役務の対価) | 課税仕入れ | 相手の適格請求書、または相手の確認を受けた仕入明細書等 |
| 相手による立替払 | 金融機関への手数料の課税仕入れ | 金融機関の適格請求書と立替金精算書(差引額は実際の手数料と同額) |
取適法の対象取引では差し引きが違反になる
取適法(旧下請法)の対象になる委託取引では、振込手数料の差し引きに厳しいルールがあります。公正取引委員会のQ&A(Q99)は、受注側が負担することに合意していても、手数料を負担させて代金から差し引くことは法律違反として問題になると答えています。
改正前の下請法の勧告事例では、書面で合意したうえで実際の手数料を超えて差し引いたことが問題とされていました。そのため「合意があれば実費は引いてよい」とする古い説明と食い違うことがあります。対象取引で差し引かれた場合は、発注側に確認するか、公正取引委員会の相談窓口に問い合わせるとよいでしょう。
よくある質問
請求書に書いておけば、必ず相手に負担してもらえますか。
請求書の一文は依頼に近いものです。確実にするには、見積や契約の段階で負担する側を決めて合意しておきます。
差し引かれた440円に返還インボイスは必要ですか。
売上値引きとして処理するなら、税込1万円未満なので交付義務は免除されます。判定は値引きの対象となった請求ごとに行います。
軽減税率の商品の代金から引かれた場合、税率はどうなりますか。
国税庁のQ&Aでは、元の取引の税率に従うとされています。食品など8%の売上なら、値引きにも8%を使います。
出典(確認日)
- e-Gov法令検索 民法(第485条 弁済の費用)(2026-10-15)
- 国税庁 インボイスQ&A 問29 売手が負担する振込手数料相当額(2026-10-15)
- 国税庁 インボイスQ&A 問30 振込手数料相当額の経理処理の変更(2026-10-15)
- 国税庁 インボイスQ&A 問28 1万円未満の判定単位(2026-10-15)
- 公正取引委員会 よくある質問コーナー(取適法)(2026-10-15)
- 公正取引委員会 報道発表(令和7年9月29日)下請法違反事件の勧告(2026-10-15)