懲戒処分とは(種類と手続きの流れ)
最終確認日 2026年10月24日
懲戒処分とは、会社が、職場の規律に違反した労働者に対して就業規則にもとづいて行う制裁です。就業規則に懲戒の種類と事由を定めておく必要があり(労働基準法89条9号)、処分が行為の性質や態様に照らして客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でなければ無効です(労働契約法15条)。厚生労働省のモデル就業規則は、けん責、減給、出勤停止、懲戒解雇の4つを例に挙げています。
懲戒処分通知書の作成
処分の種類と事実、就業規則の条を入れると、通知書と弁明の機会の通知を作り、減給の上限も確かめます。
通知書を作る懲戒の種類と重さ
モデル就業規則の第67条は、けん責(始末書を出させて将来を戒める)、減給(始末書を出させて減給する)、出勤停止(始末書を出させ、決めた日数を限度に出勤を止め、その間の賃金を払わない)、懲戒解雇(予告期間を設けずに即時に解雇する)の順に定めています。
その解説は、処分の種類はこの4つに限られず、公序良俗に反しない範囲で事業場ごとに決められるとしています。実際の就業規則では、始末書を求めない戒告、役職や資格を下げる降格、退職を勧める諭旨解雇などを加えている会社もあります。どの名前の処分を、どの順に重いものとするかは、その会社の就業規則の定めによります。
就業規則に必要なこと
常時10人以上を使う会社が制裁の定めをするときは、その種類と程度を就業規則に書いて届け出ます(労働基準法89条9号)。モデル就業規則の解説は、最高裁判決(昭和54年10月30日)を引いて、就業規則に定めのない事由による懲戒処分はできないとしています。
定めがあっても、処分が重すぎたり、事実の確認が不十分だったりすると、懲戒権の濫用として無効になります(労働契約法15条)。規定を設ける前の行為にさかのぼって処分することや、1つの行為に何度も処分を重ねることはできない、とも解説は述べています。
減給の上限
減給の制裁は、1回の額が平均賃金の1日分の半額まで、総額が1回の賃金支払期の賃金総額の10分の1までです(労働基準法91条)。たとえば平均賃金が8,000円なら、1回の減給は4,000円までです。
遅刻や早退でその時間の賃金を払わないのは、働かなかった分を払わないだけなので減給の制裁には当たりません。ただし、その時間の賃金を超えて差し引くと、超えた分は制裁として91条の制限を受けます(モデル就業規則の解説)。
手続きの流れ
法律に決まった手順はありませんが、一般には、事実の確認、本人の言い分を聞く弁明の機会、処分の決定、懲戒処分通知書の交付、始末書の提出、という順に進めます。就業規則や労働協約に懲戒委員会などの手続きを定めていれば、それに従います。
中央労働委員会の調整事例の解説は、懲戒が社会通念上相当かどうかを、罪と罰の釣り合い、従業員の間で同じ扱いをしているか、就業規則上の手続きを守り弁明の機会を保障しているか、といった観点から判定するとしています。処分の前に本人の話を聞いた記録を残しておくことが大切です。
けん責や減給では、反省と再発防止を書いた始末書を出させるのが一般的です。始末書の書き方は、しきたりノートの解説を参考にしてください。
社内での公表
懲戒処分を社内に公表することについて、労働基準法や労働契約法に定めはありません。公表するかどうか、どの範囲で知らせるかは会社が決めることになり、行うときは再発防止に必要な範囲にとどめ、氏名を出すかどうかを慎重に決めます。
公務員の懲戒免職
懲戒免職は国家公務員や地方公務員の言葉で、国家公務員法82条は、懲戒処分として免職、停職、減給、戒告の4つを定めています。会社員の懲戒解雇に当たるのが懲戒免職です。
よくある勘違い
「就業規則に書いていない処分でも、悪いことをした社員には課せる。」
→ 就業規則に定めのない事由による懲戒処分はできません(モデル就業規則の解説)。
「減給は、会社が決めた額をいくらでも差し引ける。」
→ 1回は平均賃金の1日分の半額まで、総額は1賃金支払期の賃金総額の10分の1までです(労働基準法91条)。
「けん責や戒告は軽いので、本人の話を聞かずに決めてよい。」
→ 処分の重さにかかわらず、事実を確かめ、本人の言い分を聞くことが相当性の判断で問われます。
よくある質問
戒告とけん責の違いは何ですか。
法律の定義はありません。一般に、けん責は始末書を出させるもの、戒告は始末書を求めず口頭や書面で戒めるものとして使われますが、会社の就業規則の定めが基準になります。
出勤停止は何日まで決められますか。
法律の上限はありません。モデル就業規則は日数を空欄にしており、会社が就業規則で上限の日数を決めます。
出典(確認日)
- 労働基準法(e-Gov法令検索)(2026-10-24)
- 労働契約法(e-Gov法令検索)(2026-10-24)
- 厚生労働省 モデル就業規則(令和7年12月)第67条・第68条と解説(2026-10-24)
- 中央労働委員会(厚生労働省) 個別労働紛争の調整事例 懲戒解雇の有効性(2026-10-24)
- 国家公務員法(e-Gov法令検索)(2026-10-24)