工事請負契約書の書き方
最終確認日 2026年10月22日
建設工事の請負契約は、金額の大小や建設業の許可の有無にかかわらず、建設業法19条1項に並ぶ事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付することになっています。工事内容、請負代金、工期のほか、設計変更や天災のときの扱い、資材が値上がりしたときの変更方法、検査と引渡し、支払、契約不適合責任、損害金、紛争の解決方法までを1通にまとめるのが基本の形です。
工事請負契約書 メーカー
16の記載事項がそろっているかの一覧と、印紙の金額つきで契約書を作れます。
工事請負契約書を作る19条1項に並ぶ16の事項
建設業法19条1項は、建設工事の請負契約の当事者が契約の締結に際して書面に記載する事項を、1号から16号まで並べています。4号(施工しない日・時間帯)、5号(前金払・出来形払)、10号(資材の提供・機械の貸与)、13号(契約不適合責任)は「定めをするときは」と書かれており、決めた場合に書く事項です。それ以外は、決めていなくても書面の上で扱いをはっきりさせておく事項です。
8号は令和6年の改正で、価格等の変動又は変更に基づく工事内容の変更又は請負代金の額の変更と、その額の算定方法に関する定めに改められました。資材や労務の値上がりがあったときにどう変更するかを、契約書に書いておくことが求められています。
- 1号 工事内容
- 2号 請負代金の額
- 3号 工事着手・完成の時期
- 4号 工事を施工しない日・時間帯
- 5号 前金払・出来形部分の支払
- 6号 設計変更・中止等の場合の変更と損害の負担
- 7号 天災その他不可抗力による変更と損害の負担
- 8号 価格等の変動に基づく変更とその算定方法
- 9号 第三者が受けた損害の賠償金の負担
- 10号 注文者の資材の提供・機械の貸与
- 11号 検査の時期・方法と引渡しの時期
- 12号 完成後の請負代金の支払の時期・方法
- 13号 契約不適合責任とその履行の措置
- 14号 遅延利息・違約金その他の損害金
- 15号 紛争の解決方法
- 16号 その他国土交通省令で定める事項
頭書と条項の組み立て
多くの工事請負契約書は、1枚目の頭書に工事名、工事場所、工期、請負代金、支払方法などの個別の数字を書き、2枚目以降の条項(約款)に設計変更、天災、検査、支払、解除などの決まりごとを書く形をとります。中央建設業審議会の標準請負契約約款も、契約書の頭書と約款を組み合わせる作りです。
標準約款を使うときは、頭書に「この契約書と民間建設工事標準請負契約約款(乙)と添付の図面・仕様書とによって契約を締結する」と書き、約款を添付します。国土交通省は公共、民間(甲)、民間(乙)、下請の4つを公開しており、(乙)は個人住宅建築等の民間小規模工事向け、(甲)は比較的大きな工事向けと注記しています。4つとも令和7年12月2日に改正されました。
記入例(浴室の改修、税抜150万円)
注文者が個人、請負者が工務店の例です。工事名は「山田邸 浴室改修工事」、工事場所は住所、工事内容は「既存浴室の解体、ユニットバス設置、給排水・電気工事(詳細は見積書・仕様書のとおり)」のように、見積書と仕様書を引用する形で書くと短くまとまります。工期は着手日と完成日、引渡しは完成検査に合格してから7日以内などと決めます。
請負代金は「金1,650,000円(うち取引に係る消費税及び地方消費税の額 金150,000円)」のように消費税額を分けて書くと、印紙の判定は税抜の150万円で行われ、令和9年3月31日までに作る紙の契約書なら200円です。支払は契約時3割、中間3割、完成引渡し後30日以内に4割、のように時期と割合を並べます。
契約書がないとき
口頭の約束でも請負契約そのものは成り立ちますが、建設業法19条は書面の交付を求めています。書面がないと、工事の範囲、追加工事の代金、工期の遅れ、引渡し後の不具合をめぐる話し合いで、何を約束したかを示す手がかりがなくなります。
追加や変更が出たときも、19条2項により変更の内容を書面に記載して相互に交付することになっています。小さな変更でも、変更契約書や変更合意書を1枚作り、変更後の工事内容、代金、工期を書いておくと、完成後の精算がずれにくくなります。
注文書と請書で済ませる場合
下請工事などでは、契約書の代わりに注文書と注文請書を取り交わすことがあります。この場合も、19条1項の事項が注文書・請書(又はそれが引用する基本契約書や約款)のどこかに書かれていることが必要です。注文書に金額と工期しか書いていないと、設計変更や価格変動の扱いが抜けてしまいます。
注文請書は請負者が作る文書で、請負金額の記載があれば第2号文書として印紙の対象になります。注文書と請書の作り方は注文請書のツールで、記載事項のそろい方はこのページの一覧と照らして確かめられます。
電子契約で交わすとき
19条3項により、相手方の承諾を得れば、書面の代わりに電子情報処理組織を使う方法で契約を交わせます。施行規則13条の4は、相手方がファイルを出力して書面にできること、改変がないか確かめられること、本人であることを確かめられることを技術的基準としています。電磁的記録の契約書には印紙税はかかりません。
現場の帳簿とあわせて
契約書の請負代金と、現場ごとの材料費・外注費・経費を並べておくと、追加工事の見積りや次の工事の値決めに使えます。そろばんノートの「建設業の現場帳簿 2026」(Excel、BOOTHで販売)は、現場ごとの原価をまとめる帳簿です。
よくある勘違い
「小さなリフォーム工事なら契約書はいらない。」
→ 19条は建設工事の請負契約の当事者に適用され、金額や建設業の許可の有無で外れる規定はありません。
「見積書に署名をもらえば契約書の代わりになる。」
→ 見積書には設計変更、天災、価格変動、紛争の解決方法などが書かれていないのが普通で、19条1項の事項がそろいません。
「標準約款を使えば頭書は何でもよい。」
→ 工事内容、請負代金、工期、支払方法などの個別の数字は頭書に書きます。約款はそれを前提に作られています。
よくある質問
建設業の許可がない個人の職人でも19条の対象ですか。
19条は「建設工事の請負契約の当事者」に適用されるので、許可の有無は関係ありません。
契約書は何通作りますか。
一般的には2通作って注文者と請負者が1通ずつ持ちます。2通とも紙で作れば、それぞれに印紙が要ります。
約款は自社で書いてもよいですか。
かまいません。19条1項の事項がそろっているかを確かめ、相手方に不当に不利な内容にならないよう注意します。
出典(確認日)
- e-Gov法令検索 建設業法(昭和二十四年法律第百号)(2026-10-22)
- e-Gov法令検索 建設業法施行規則(2026-10-22)
- 国土交通省 建設工事標準請負契約約款について(2026-10-22)
- 国土交通省 民間建設工事標準請負契約約款(乙)(2026-10-22)
- 国税庁 No.7124 消費税額等が区分記載された契約書等の記載金額(2026-10-22)
- 国土交通省 改正建設業法の説明資料(令和6年12月13日施行分)(2026-10-22)