海外のクライアントへ請求書を送ったら、入金額が請求額より少なかった。そんなときに関わってくるのが源泉徴収です。国内取引の源泉徴収と、海外クライアントによる源泉徴収はしくみが異なり、対応を誤ると手取りが減ったままになりかねません。本記事では、英文請求書と源泉徴収の関係を、国税庁の根拠とあわせて整理します。個別の判断は顧問税理士にご確認ください(執筆時点:2026年9月)。

海外クライアントからの支払いに日本の源泉徴収はかかるのか

日本の源泉徴収は、原則として日本国内の支払者(源泉徴収義務者)が、一定の報酬を支払う際に差し引く制度です。海外のクライアントは日本の源泉徴収義務者ではないため、海外クライアントからの支払いに日本の源泉徴収が課されることはありません。したがって、英文請求書に日本の源泉徴収税額をあらかじめ差し引いて記載する必要は、原則としてありません。

なお、国内の取引先(日本の事業者)から個人が報酬を受け取る場合には、10.21%(100万円超の部分は20.42%)などの源泉徴収が行われることがあります。これは国内取引の話であり、海外取引とは切り分けて考えます。

相手国で源泉徴収される場合がある

一方で、クライアントの国のルールによっては、支払時に現地の源泉徴収(foreign withholding tax)が差し引かれることがあります。これは相手国の税制に基づくもので、国や所得の種類(役務提供、ロイヤリティなど)によって扱いが異なります。入金額が請求額より少ない場合、この現地源泉徴収が原因であることが少なくありません。

差し引かれた場合は、相手から源泉徴収の証明書(withholding certificate)を受け取っておくと、後の手続きで役立ちます。

租税条約でレートが変わることがある

日本と相手国の間に租税条約があると、現地の源泉徴収税率が軽減されたり、免除されたりする場合があります。条約の適用を受けるには、相手国所定の届出(居住者証明書の提出など)が必要になることが多いため、取引開始時に相手先へ確認しておくとよいでしょう。

二重課税は外国税額控除で調整する

現地で源泉徴収された税金は、そのままでは日本と相手国で二重に課税された状態になり得ます。これを調整するのが外国税額控除です。国税庁のタックスアンサーNo.1240によれば、居住者が外国の法令により所得税に相当する租税を納付することとなる場合には、一定の控除限度額を限度として、その外国所得税額をその年分の所得税額から差し引くことができます(国税庁 No.1240 居住者に係る外国税額控除)。確定申告で外国税額控除を適用することで、二重課税をやわらげられます。海外の税務や口座まわりの実務はkaigai-freelance.comの情報も参考になります。

英文請求書での書き方

現地源泉徴収が見込まれる場合でも、請求書には原則として満額(gross)を記載し、源泉徴収は相手側の処理に委ねるのが一般的です。手取りを明示したいときは、次のように内訳を添えると誤解がありません。

  • Subtotal: $3,000.00
  • Withholding tax (to be deducted by payer): as applicable
  • Net payable: subject to the payer's local withholding

日本国内の取引で源泉徴収額を計算したい場合は、源泉徴収税額の計算ツールを利用できます。英文請求書全体の作り方は英文請求書の書き方 完全ガイドを参照してください。

具体例:米国クライアントに源泉徴収された場合

米国の法人にコンサルティングを提供し、3,000USDを請求したところ、支払時に現地の源泉徴収として一定割合が差し引かれて入金されたとします。この差し引きは米国側の源泉徴収であり、日本の源泉徴収ではありません。日米租税条約の対象となる所得であれば、相手先へ所定の様式(米国であればW-8BENなど)を提出することで、源泉徴収税率が軽減または免除される場合があります。手続きをせずに差し引かれてしまった分は、日本の確定申告で外国税額控除を検討します。相手国や所得の種類によって扱いが異なるため、金額が大きい取引では事前に確認しておくと安心です。

契約で手取りを守る(グロスアップ条項)

現地源泉徴収が見込まれる取引では、契約書に「源泉徴収された場合は支払者が上乗せして満額を支払う」というグロスアップ条項(gross-up clause)を入れておく方法があります。これにより、差し引かれても手取りが目減りしません。ただし、相手が条項を受け入れるかは交渉によります。条項がない場合は、請求書は満額で発行し、差し引かれた分は外国税額控除で調整するのが基本の流れです。

よくある質問

Q. 海外クライアントに源泉徴収された分は取り戻せますか。 差し引かれた税額は、日本の確定申告で外国税額控除を適用することで、二重課税を調整できる場合があります。控除には限度額があり、条件も複雑なため、顧問税理士にご確認ください。

Q. 請求書に最初から現地源泉税を引いて書くべきですか。 原則は満額で請求し、源泉徴収は相手側の処理に任せます。契約で手取り保証(グロスアップ)を定めている場合は、その取り決めに従います。

まとめ

海外クライアントからの支払いに日本の源泉徴収はかかりませんが、相手国の源泉徴収が差し引かれることがあります。租税条約で軽減される場合があり、二重課税は外国税額控除で調整します。英文請求書は原則として満額で記載し、源泉の扱いは相手側の処理に委ねるのが基本です。判断に迷う場合は、顧問税理士にご確認ください。